今年の夏は、暑さを忘れるほど面白い仕事がたくさんありました。
その中でも、思い出深いのが温泉宿の屋外照明の設計施工です。
私が信頼を寄せる腕の確かな庭師からの紹介だったので、腕まくりで現地に行ったのが春の陽気が心地よい3月でした。現地で初めてお会いした宿のオーナー様とも気が合い、庭師と私と三人でほっこりしたお打合せから照明設計が始まりました。
その後、初夏に配管と配線工事にお伺いし、真夏の照明設置工事となりました。
今回は、滋賀からは移動に5時間程かかる現場ということで、泊り込みの出張仕事です。

ただ、今回は一味違う出張仕事でした…
それは、まだオープンしていない現場の宿にデモとして宿泊しながらの施工となったのです。
上質な寝具と源泉掛け流しの露天風呂は、24時間いつでも入れます。朝食までテストとして和食シェフによる料理が運ばれてきました。

うちの新人スタッフ(息子)も同行し、彼にとっては幸せすぎる初出張となりました。

私が庭園灯の開発を始めたのが10年ほど前になりますが、当初から思っていたことがあります。
「今後、温泉の景色に庭園灯を設置するならば、温泉に入りながら配置と高さを決めるべきだ」ということです。
そして今回、スタッフ達に頼みこみました。「温泉に浸かりながら照明配置を決めさせてくれ」と。
みんな笑いながら了承してくれ…いや、私は半ば強引に温泉に浸かりながら、露天風呂の前庭にいるスタッフへ照明配置の指示を出しておりました。
ここに日本酒を持ち込むわけにはいかないが、この贅沢すぎる状況に私は感無量でした。

実際、これはとても大切なことで、庭園灯を突き詰めるために必要不可欠な目線であり、決してふざけておりません。が、それにしても、こんな最高なシチュエーションの仕事が他に存在するでしょうか。懐の深いオーナー様とこの仕事を紹介くださった庭師、わがままに付き合ってくれたスタッフ達に感謝しております。私は、幸せ者です。
この宿には、銅の庭園灯だけでなく、銅の亀甲網をあしらった新作照明も使わせていただきました。また、別回路にて高品質スポットライトによる隣接する竹林のライトアップ演出も設計しました。

タイマーやセンサー、調光スイッチなどで状況に合わせた照明演出が実現できる屋外照明設計とし、暖色で広葉樹を優しく照らし、白色で竹林を青々と照らしました。


日暮れのリビングからの眺めは幻想的な竹林風景です。

そして、やはり極め付きは露天風呂からの眺めです。
湯船に映る灯りがゆらゆら光り、奥行きのある整備された竹林に包まれ、幻想的な風景にカラダが溶け込んでいきます。この竹林から採れた笹で作られた竹穂垣が自然との境界を曖昧にし、より竹藪に奥行きを感じさせる仕掛けになっています。

自然の美しさを活かしながらつくり込まれた庭の造形美。洗練されたオーナー様の感性としつらい、温泉とそこに広がる景色。そして、日暮れに浮かび上がる銅の灯り。それらが相まってとても良い宿が熱海に生まれました。
基本的には庭が出来上がる過程に合わせて照明を配置していきますが、時にはその場に合わせた照明を誂えで作ることもあります。今回は、玄関横に良い姿の朝鮮灯籠が据えられたので、火袋に合わせた照明を制作しました。

気の合う庭師と作り上げる過程がなんとも心地よく、思い出深い仕事になりました。


宿: TRANQUIL Ambient Retreat
庭: 庭相 niwasou
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