庭園灯のこと

庭園灯を作りたいと思いたったのは、15年ほど前のこと。時間がかかりましたが、今年より正式に受注開始となりました。

電気用品安全法の技術基準に則った構造にするには、なかなか骨が折れましたが、明かりが灯った庭園灯の姿を見ると、成長した我が子を眺める様な気持ちになり私自身が癒されております。

最近では、庭や文化財のライトアップといえばプロジェクションマッピングをよく見かけるます。あれはあれで、賑やかで良いと思うのですが、私はやっぱり「暗闇と火色」のオーソドックスなライトアップが好みです。暗い庭にほんのり灯る明かりで浮かぶ景色、これぞ日本人のDNAに刷り込まれた陰影を楽しむ美的感覚ではないかと思います。

白熱球は、電気エネルギーでフィラメントが燃えます。まさに火そのものの色です。エジソンは、竹炭に電気を流し真空で燃やす事で電球を作り出しました。最近では、LED電球も電球色の再現性が高くなってきましたが…やっぱりエジソン方式の本当に燃えてる火色が好きです。

実は、庭園灯を作るにあたり1番苦労したのは、庭園灯研究所用の「庭」自体を作る事でした。

苦労したというより、楽しかった事…ですが。

草木、石、水、四季、様々な要素が詰まった実験用の庭を作り、照明の形や明るさ、配置などを試行錯誤し出来上がったのが、この庭園灯です。

この庭園灯は、よくあるスポットライトと比べ大きく違うところがあります。スポットライトの様に下から突き上げる光と違い、足元を優しく照らす程度の暗めの照明ということです。

青々とした木々や紅葉を目が覚めるように照らすのではなく、暗さの中に揺らぐ美しい庭の造形を見つける様なほのかな明かり。そんな庭園灯です。

とにく、冬場は違いがてきめんです。落葉した木々をスポットで照らすと反射する葉が無く光が抜けてしまいます。しかし、足元を照らす庭園灯は落葉後にしか気付かない落ち葉と石路の造形美を映してくれ、雪が降ると地面に広がる美しいコントラストが浮かび上がります。

また、丁度良い暗さは、垣根の向こうや見えなくていいものを闇で隠してくれます。

少し、我が庭園灯をひいき気味に書いておりますが、暗さの中にある「美」を見つける夜の庭遊びを皆様にも体感して頂きたいと考えております。

※Atelier Key-menの庭園灯は、ショールームでの展示が御座いません。実物をご覧になりたい方は、Contact us よりお問合せください。滋賀にある非公開の庭園灯用の庭にご案内させて頂きます。完全予約制