嵐山へ手紙を書くために行きました。 その3

ちょうどこの頃、嵐の前の静けさを思わすように暑さがやわらぎ、このまま秋になるのでは? と思うほど過ごしやすい気温が続いておりました。
今年も浴衣姿はこれで最後でしょうか。
夕涼みを楽しみながらの来場者がちらほらと。

西陽が通り過ぎたSAGANO-YUは、急に色づき始め、手紙を書く方々も時の流れを肌で感じながら想いにふけておられます。

6時を過ぎると外の景色は、見えにくくなり、会場の空気は温かい色に染まり、一番手紙が書きやすい時間になります。
静まり返ったこの場所には、誰かを想う人達でいっぱいに。


耳に言葉は入って来なくても、ここでは、人を想う多くの言葉が行き交かっている・・そう感じました。
優しい言葉なのか、冷たい言葉なのか。私には関係の無いことかも知れません。でも、人の優しさを感じました。
手紙を書く人の背中をぼーっと眺めていると、なぜか私自身が電気スタンドになった気分でした。
皆さん時間はゆっくりあります。 ごゆっくり。。
ある日、閉店間際に遠慮がちに一人の男性がやってきました。
丁寧な喋り口調で「たまたま来たんですが、自分も書いてもいいですか」と。
お洒落でハスキーボイスの彼は、とてもいい空気をかもし出しており、私は、勝手に彼の職業を想像して見守っておりました。
(歌手かな・・・)
閉店時間がとっくに過ぎておりましたが、SAGANO-YUのスタッフも無言の笑顔で(ごゆっくり)と。

彼が立ち上がった頃は、もう外に人の影もありませんでした。
そして、彼は帰り際にこんな事を。
「自分は東京で舞台俳優やっております」
「実は今度、嵐山にいた文豪の若かれし頃の役を演じる事になりまして・・・」
「役作りの一人旅でした」
「ここで、ガラスペンで手紙を書いていると、文豪の気持ちが分った気がしました・・」
「貴重な経験をありがとうございました」
と。
思わぬ言葉に嬉しくなり、握手をして彼を見送りました。
出張中にお土産や大きな鞄を持ったサラリーマン風の男性が偶然立ち寄られ、家族宛に手紙を書かれたり。
以前にお仕事をさせて頂いた滋賀の大きな会社の社員さん達が、「照明に対する考えが変わって来ました。。。」
とわざわざ手紙を書きに来てくれたり。
手紙を書きながら涙がこぼれた優しい方もおられ、
東京から手紙を書きに来られる方々も。
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訪れた方々がお帰りになる時の笑顔が素敵でした。